いつもよりも数十センチ近い。ふわりと鼻をくすぐったシトラスの香水の香りは、リュウ先輩やあの人から香る男の人の香りと似通っているのに全然違う。
樋野くんとこんな近い距離で視線を合わせることになろうとは。人生わからないものかも。
というか、まじまじと樋野くんを見て、結構顔が整っていることにようやく気がついて。
このサークルイケメンってちやほやされる人間がちょっと多すぎやしない?、なんて。
慣れない距離感に焦ってるはずの本心とは裏腹に、変なことばっかり思い浮かんでは消えていく。
「……先輩?」
樋野くんの瞳がゆらゆらと揺れた。
むず痒い視線から逃げ出したくなって、「別にいいと…思う」なんて、逸らしながら答えれば、「ほんと?」とすこしばかり甘えた声が返ってくる。
ああ、もう勝手にしてくれ。なにがいいかもよくわからなくなった脳みそで投げやりな心を反芻しているわたしをよそに、樋野くんはそれはもう最大級に嬉しそうな顔で笑った。
なんだそれ。なんか、その笑顔は反則だ。わかんないけど。
「──────ミナ先輩。俺、たぶん、すきになると思う」


