───クールで結構女の子に人気がありそうな樋野くんは、どうしてだか理由はわからないけれど、わたしに心を開いてくれているようだった。
初めて見た者を親鳥だと認識する雛鳥のようなものなのか。あの日─新入生歓迎会の日─初めて話した相手だからか、きっとわたしのことを親鳥かなにかだと勘違いしているんだろう。
が、わたしが親鳥なら親離れを手伝う必要がある。いつまでもわたしの後ろを追いかけていても彼の成長には繋がらない。
「樋野くん。サークルに馴染みたいなら、わたしみたいなテントの下で1人座ってる先輩相手にするんじゃなくて、あっちのリア充軍団のところ行かないとダメだよー?」
「大きなお世話です」
「うわっ、今のグサッてきた」
「すいません。オブラートに包むの苦手なんで」
なんだか最初より容赦がなさすぎるような。
親鳥のはずがこんなに邪険に扱われてはおかしい。
というか、樋野くんって言葉の節々がトゲトゲしてるし、わたしのことをもはや先輩と思っていない気がする。
親鳥雛鳥想定だったけれど、もしやただただ舐められているだけってこと?


