君に毒針






「先輩、あっち行かないんですか?」



───どのくらい時間が経っていただろうか。

結局テンションは上がらないまま、用意されたテントの下でぼーっとしていたら、いつの間にか隣には肉を片手に立ちすくんだ樋野くん。



「あー、樋野くん。おはよー」

「………おはようございます」



読めない表情の樋野くんは一瞬怯んだような素振りををして、「隣、いいですか?」と遠慮がちに問う。

断る理由もない。どうぞ、と言うかわりにちょうど空いていた隣の椅子をぽんぽんと叩けば、おずおずと樋野くんは隣に腰かけた。


…てか、樋野くんってこういう集まり来るんだ。ちょっと意外かも。



「樋野くんって変だよね」

「は?」

「いや、なんか、樋野くん、こーゆーの嫌いそうじゃん」

「……どういうことですか?」



どういうことって、そのまんまなのに。
こういう大勢でのイベント?っていうの。嫌いそう。
彼の読めない空気感がそうさせるのか、はたまた一見冷たく見える言動がそうさせるのか。

…というか、新歓の帰り道、とても疲れたから暫くは大勢で集まるのは行かないと思う、とか言ってたのに。


疑問を抱えながらなんとなく樋野くんのことを見つめれば、また先程のような怯んだような素振りをした樋野くんは、わたしから視線をわかりやすく逸らす。

なんだよ、その反応。