君に毒針






「BBQとか久しぶりだわ!うっわ、準備からもう楽しくね?」



やけにテンションが高い清水先輩がテキパキとコンロを用意して、真っ黒い炭に炎を灯しながらニカッと笑う。

…今日の清水先輩は、いつもより暑苦しい気がする。そんなこと言ったらもっとウザくなるから言わないけど。


今日は、清水先輩の「そろそろさ、BBQしたくね?」という一昨日の思いつきが発端で、サークルのメンバーで急遽、学校から数駅先のBBQ場に来ている。

日曜に出かけたくなかったわたしは初めは来る気がそんなになかったけれど、リュウ先輩が「俺も行く」って言い出したから、釣られて「わたしも!」と反射的に手を挙げてしまって結局休日にこうして集まることになった。



「あっついんだけど。5月なのに暑くない?地球頑張れよ」

「サクラ、八つ当たりがすぎるよ」

「ごめんごめん。ごめんよ地球ー!」



わたしの隣に立つサクラもやっぱり今日はどこかテンション高め。

「似合うでしょ?」とか言ってサングラスをかけて、腕まくりをして。それはもう、臨戦態勢、という感じだ。

サクラってこういう集まり?遊び?めんどくさいから行きたくないとか最初は言うくせに、結局わたしよりも楽しんでるんだよね。
自分じゃそういうツンデレな可愛いところ気付いてないんだろうなあ。