君に毒針




「誕生日来たら、お酒飲めるじゃん」

「先輩わたしとお酒飲みたいってことですか!」

「そうは言ってない」

「ええ!?先輩、ちょっと難しすぎます」

「…俺は“難しい”くらいがいいんじゃないの?」



妖しげな視線の先輩が、わたしの瞳をとらえた。

ずるいんだ。先輩はやっぱりずるい。

期待させてみたり、落としてみたり。
今日だってご飯なんか行く気ないって感じだったのに、急にこうやって連れてきてくれるし。
ふたりきりだからかいつもより目が合って、その度にいつもより優しく「なに?」って聞いてくる。

こんなの、わたしで遊んでるんだってそうわかってるのに、それなのに、離れられないし諦められない。



先輩の視線から逃げたくて。

半分以上残ってたウーロン茶をぐっと飲み干せば、「いい飲みっぷりじゃん、お酒でも期待してる」、とか言って先輩が笑う。


ねえ、先輩。

お酒が飲める大人の女の人になったら、先輩とわたしの距離ってちょっとは近づきますか?
大人になったら、先輩に追いつけますか?
大人になったら、先輩の難しいところ、見せてくれますか?

───先輩、大人になったらわたしの片思い、終わりますか?