「で、いつなの、誕生日」
リュウ先輩が柔らかく微笑んでいる。
それだけで簡単にわたしの心臓はうるさくなるし、頬だって簡単に温度を上げてしまう。
我ながら単純明快すぎるなあ。そういうところが子供、認定されてしまう要因かもしれない、けれど。
生理現象を止めることは出来そうもない。
やっと、なんとか絞り出した「ろ、6月10日です」のひと文は弱々しくリュウ先輩に届いて、リュウ先輩は興味があるのかわからない「ふーん」なんていう言葉をわたしに返す。
「えっ、えっ、もしかして祝ってくれるんですか!?」
「ちがうよ、ばーか」
「プレゼントは先輩でいいですよ!」
「神楽、すぐ変なこと言う」
ふふって楽しそうに微笑んだリュウ先輩が、ハイボールを一口。
傾けたグラスの中でカランって鳴った氷の音がやけに鮮明で、どうしてかドキドキする。


