君に毒針



「リュウ先輩、わたしに負けたらご飯連れてってくださいね」

「……連弾に勝ち負けないじゃん」

「リュウ先輩が負けたー!って思ったら負けなんですよ」

「ふーん、」



左肩がリュウ先輩に触れる度に熱くなる。

緊張して手が震えるから、勝てるはずもないし。
そもそもリュウ先輩はとんでもなくピアノが上手で。
ピアノもドラムもなんとなく出来る代わりにどれもそこそこ、なわたしがどう頑張っても勝てない戦を挑んじゃうところ。

本当に治した方がいいよなあ。






今日のわたしはなんだか幸せすぎて死んでしまいそう。冗談ではなく本気で、そんな思考を巡らせながら、目の前に座るリュウをちらりと見た。



「神楽って、誕生日いつだっけ」

「えっ、リュウ先輩。わたしに興味持ってくれてるんですか!?」

「別に持ってないけど、」