君に毒針



好きな人の好きな箇所、好きになった理由、好きの伝え方、その他もろもろ。聞いてもないのに初対面の俺にペラペラ話すほど、好きに強気かと思えば。
実際はその人の背中を見つめているだけで、身を引いて帰ったり。

俺に語っている時はあんなに幸せそうな表情をしていたくせに、一瞬で泣き出しそうな表情に変わってしまったり。

先輩は、チグハグでおかしくて、だから、気になってしまっただけ。



「…ミナはねー、今日はサボりかな」

「え?」

「そういう日があんのよ、あの子にも」

「……はあ、」

「ま、心配なら連絡したげてよ。ミナは自分のことになると鈍感だったりするから、押して押して押しまくるくらいがちょうどいいと思うよ」

「………俺そんなこと聞いてませんけど」

「あ、ごめーん!要らぬお世話だったー?」



楽しそうに笑う木下先輩は、やっぱり俺のことバカにしてるっぽい。

不機嫌に拍車がかかって、素っ気なく「もういいです」と返事を返した俺のことを更に笑い始めた木下先輩を、なんとなく心のブラックリストに登録しておいた。