君に毒針







わたし、神楽湊音(ミナ)は、大学2年生の至って普通な女子大生で、至って普通に毎日大学に通っている。

この大学に入ろうと決めた理由はもちろんただ1つ。リュウ先輩がいるから。


わたしの頭よりだいぶ賢い大学に入っちゃったリュウ先輩に追いつくのは本当に大変だったけれど、横槍野郎改め恩人、清水先輩がなんだかんだ言いつつ、勉強見てくれてたおかげもあって、なんとかこうしてリュウ先輩とおんなじ大学で過ごせている。



「ミナ、サークル来たならサークル活動して!?いつまでもリュウ先輩のこと見つめてないでよバカ!」

「サクラー、そんな事言わないでよ」

「あー、もうくっつかないで」



部屋の片隅にある2人がけのソファに親友───木下サクラと腰掛けて、結局面倒くさそうにしながらもわたしとサークルに来てくれたリュウ先輩の後ろ姿を見つめる。



───モダンジャズ研究会。略してジャズ研。それがわたしたちの所属しているサークル。

防音機能がついたこのサークル部屋には、ピアノやらドラムやらが置いてあって、その時にいるメンバーでセッションを楽しむ、っていうのが基本。

大学祭とかの前は何人かでバンドを組んで練習したりすることもあるから、その時は好き勝手、ではなくなるけれど。