君に毒針




─────腹が立ったんだと思う。
ばかみたいに片思いをしている先輩に腹が立った。腹が立って、なんでこんなにイラつくんだって思って、気付いた。あー、すきなのか、って。

はじめは認めたくなくて足掻こうとしたんだけど、俺と話しているくせに、目の前の俺じゃなくすきな人ばかりを見つめる先輩を見ていたら、もうだめだった。



先輩たちのことは、全部わかってるわけじゃない。
すきになってよく目につくようになってから、なんとなく、先輩って割とややこしいんだな、と思った。
俺はライバルをひとりだと思っていたけれど、ふたりもいたから。



俺のことを意識してほしくて必死だった。だから、先輩にわざと言ったことが沢山ある。
先輩はやめてほしい時の顔がわかりやすい。これ以上言わないでって顔が、すごくわかる。

きっと先輩のことをすきなあの人はそれでやめてくれるんだろうけど、俺はそんなに優しくない。だから、言った。そのせいで、嫌われたくはなかったから、塩梅が難しかった。