君に毒針






それは、ひどく甘くてまるで毒のようで、はやく抜け出さないとって思えば思うほどハマってしまう。

自分の弱さにわたしはまだまだ勝てそうもない。



「風呂もう入ってきたの?」

「うん、入ってきた」



月が顔を出して、春の夜風が頬を伝って、少しだけ寒いって感じた。

鍵開けとくとか不用心だよって言ったら、くるって言ってたからってケラケラ笑う彼。


部屋に入ってからすぐ、ベランダに出ていた彼の隣に立てば、風邪ひくよってなぜか上着を着せられた。

そういうの、ずるい。