リュウのことがすきな女の子、がすきなんだ、と誰かにからかわれたことがあったけど、それはちがう。
中学の時のそれは、むしろ、俺が好きな子がリュウを好きだった、というやつで、リュウとその子が付き合うよりもずっと前から俺はその子が好きだった。
だから、リュウと別れたその子につけこんでめでたく付き合ってもらったわけだけど、全然だめだった。
「…やっぱり忘れられないの。まだ好きなの」と泣かれた時は、本当にやってられねえ、と思った。
俺は、臆病者だった。すきと言うのが怖かった。
弱いところにつけこんで、そうやってずるい方法で手に入れて、また、失うのが怖かった。
「やっぱりリュウ先輩じゃないと無理」と彼女に言われたくなかった。言われたら、もう立ち直れないと思った。


