君に毒針




「……しなないで、ね?」

「うーん、たぶん、」



樋野くんと一瞬身体が離れた。それをすこし寂しく思ったら、すぐ、また近づく。今度はべつの方法で、ぜろ距離になる。

樋野くんの手のひらが、わたしの耳を塞ぐように、顔の横に触れて。それから、一度、唇に触れる。



「んっ、!?」



一瞬の行動に身構える余地もなくて、驚きで固まってしまえば、樋野くんは「つぎは、目閉じてください」と甘い囁きを落として、また塞ぐ。

2回、3回、最初はずっと数えていたけど、余裕は奪われる。もう、わからなかった。何回も重なる度、毒が回るみたいに全身が熱くなって、くらくらする。



「っあ………ひの、く」

「…名前呼んで、」

「ん、……ひの、」

「ちがう、滉」



重なる合間。伏せていた瞼を上げた樋野くんは、ねだるようにわたしを見つめる。でも、答える余裕はくれない。
いじわるだと思った。そんな大人みたいな顔しないで、とも思った。もう、限界だ。しんじゃう。ころされそうなのは、わたしだよ。