ひんやりとした扉が背中に当たっている。
この状況は──樋野くんに連れられて樋野くんの部屋に入ってしまった状況は──いろいろと良くないから、閉められた扉をすぐに開けようとしたけれど、それは、振り向いた樋野くんがわたしよりも先に鍵を閉めるから、出来なかった。
「ひ、のくん」
樋野くんが、こっちを見て、立っている。向けられた視線が、いたかった。
じりじりと、まるで太陽の下で虫眼鏡をかざしたような、そんな、感じ。今にも燃えてしまいそうで、熱くて、逃げられない。
「もういっかい言って、」
樋野くんが掠れた声でそう言う。真っ直ぐわたしを見る瞳が甘ったるくて、思わず逸らしたら、「言って、おねがい」と。
こんなの知らなかった。すきって言うの、慣れっこだと思ってた。だって、ずっと言ってきたから。それなのに、こんなに緊張する。
「樋野くん、あの、ね」
ばくばくばく。自分の心臓の音しか聞こえない。


