ちょうど2階分あがったとき。後ろから追いかけてきていた樋野くんが3階への階段をのぼり始めようとしたわたしの腕を掴む。
触れた場所が熱くて、どうにかなりそうだった。
「ミナ先輩、」
樋野くんの不機嫌な言葉が落っこちてくる。何逃げてんの、って言いたげ。
だけど、答えてはあげられない。もう、いろいろ、いっぱいいっぱいなの。って、そんなことを考えていたら、樋野くんはそのままわたしの腕をひいてしまう。
「え、ひ、樋野く、」
「…ミナ先輩がわるい」
「ちょ、と、待って」
「無理」
─────もう待たない。
そう聞こえたのはちょうど扉が閉まったのと同時。樋野くんは、すこぶる強引だった。もはや誘拐、と言っても過言じゃない。
樋野くんは2階の住人だった。そういえば、メッセージを交換した時、そう言っていた。「俺は2階なんです」と一緒に乗ったエレベーターのボタンを押しながら言っていた。


