君に毒針




「樋野くんのことが、すき。すきだって、さっき、思った、の。気づいたの!ちゃんと思って、そうしたら、伝えないとって思ったんだけど、その…ごめん、わたし考え無しでどうやって言おうとか、考える前にかけちゃって、だから、えっと、

とにかく、わたしは──っ、!?」



樋野くんがすきだ、と。もう一度伝えようと思ったのに、突然、後ろからスマホを取り上げられて、かなわなかった。
熱を持った右耳が残っている。取り上げられたスマホの行方を目で追うように振り向けば、そこにはさっきからずっと、もうずっと、頭の中にいる人。



「……ミナ、先輩、」



息が上がっている。樋野くんは走ってきたのか肩が少し上下していて、あれ幻?、と一瞬思って、だけど、樋野くんの声はやけにリアルだから、ちがう。



「ミナ先輩、あのさ、」

「……、」

「そんな大事なこと言うなら、ちゃんと直接……………先輩?」



取り上げられたままわたしのスマホが樋野くんの右手にある。
ぼんやり、それを見ながら、ああいまさっきまでわたしこれで樋野くんと話してて、と置いてけぼりになっている頭を必死に現実に引き戻していた。