君に毒針



目の前の光景がチクチク刺さって心が痛い。

リュウ先輩に会えるかも、なんて期待に胸を踊らせてサークルにやってきたわたしにこんな仕打ちってありますか。

1年生と思しき女の子と仲睦まじく話すリュウ先輩。

二日酔いなくせに学校来るなんて。二日酔いなくせにわざわざサークル来るなんて。リュウ先輩今日変だよ。



「神楽、扉の前で止まんのやめろよ。入れねーから」

「…あっ!清水先輩!おはよーございます!」

「おーおー、元気だな」

「それほどでもー!」



ひとりじゃそこに入る勇気が出なくて。扉の前で立ちすくんでいたわたしの後ろにいつの間にか立っていた清水先輩は、やっぱりお酒に強いらしく、微塵も変化を感じさせない。
今は強くいないとって、なにかを誤魔化すように振り返ってニコニコと笑えば、清水先輩はくしゃくしゃってわたしの頭を撫でた。

手のひらが優しくてすこしだけ安心する、とは絶対に言わない。



「あっリュウ先輩ー!おはよーございます!こんにちは!今日もすきです!」



清水先輩とわたしの声に振り向いたリュウ先輩。
ついさっき着いたフリしていつもの挨拶を唱えれば、いつも通り「うるさい」って言われて。

わたしの知ってるリュウ先輩がまだそこに居てくれたことに酷く安堵した。