(神楽side)
清水先輩の言葉が、残っている。結局最後までわたしに優しさをくれた、先輩の言葉が頭の中に。
───神楽、今度はタイミング間違えんなよ。神楽は俺みたいに間違えたら、だめだよ。ちゃんと言わないと、伝わんないんだよ。
全て言い終えたあと、先輩はそう言って笑った。みんな、サクラも清水先輩も、もしかしたらリュウ先輩も。わたしのことなんか、お見通しなのかもしれない。
清水先輩のマンションを出て、立ちすくむ。間違えんなよ、の言葉を咀嚼する。
はじめてメッセージのやり取りをしたのは、講義中だった。
【秘密】のひとことにムカついてサクラに愚痴ったのに、全然サクラは聞いてくれなかったんだっけ。
はじめて一緒にセッションをしたときは、わたし隣に座るリュウ先輩でいっぱいいっぱいで、樋野くんのことは全然見れてなかったなあ。今思うと、ちゃんと見ておくんだった、なんて。
はじめて下の名前を呼ばれたときは、勝手にしてって投げやりに名前を呼ぶこと許容したのに、わたしの考えてることなんか全然知らずに、樋野くんが嬉しそうに笑ったから、どうしていいかわからなかった。
でも、あの日、はじめて繋いだ手のひらは、本当に困ったけど嫌だとは思わなかった。


