君に毒針




じくり、と。ずっと、心臓が焼け焦げていた。ぼろぼろの片思いのせいで、痛かった。今も痛い。でも、さっきより、神楽と話す前の自分より、ほんのすこしだけ、痛くない。

部屋に戻る直前。鍵を開けようとする俺の後ろで、リュックに忍ばせていたらしい缶チューハイを取り出したリュウは、「おたがい失恋記念日だから、呑もうよ」と訳の分からないことを言った。

だから、「リュウは失恋してねえじゃん」と言ってやろうと振り返ったけど、リュウはどうしてか俺とおんなじ顔をしているから、もういいや、と思って、「呑みたいだけじゃん」と笑ってやる。



───わたし、清水先輩のこと、すきでした。
耳の奥に残った言葉が、きっとこの先もずっと消えないんだろうと思った。

俺はずっと間違えていた。でも、俺は、何度やり直したってきっと間違える。間違えて、しまう。意気地なしだから、きっと間違える。



玄関に入ってすぐ、靴を脱ぐリュウの手から缶チューハイを盗む。プルタブを勢いよくあければ、ぷしゅう、という音と一緒に空気が抜けていく。


こんなに痛くてくるしいの、もう、さいあくだ。それなのに、俺は捨てられない。もうすこし、捨てるのに時間がかかる。


一口含んだお酒の味はうまくしなかった。だけど、今はアルコールがほしくてほしくて堪らなかったから、もう一口、呑む。


そうだ、このあと、リュウに手伝ってもらって、部屋の模様替えをしよう。
ひとりじゃどうにも出来ないから。そうやって、いっこずつ、捨てていこう。
俺より酔っ払うのがはやいリュウは、多分めんどくさそうにやだよって言うだろうけど、半分くらいはリュウのせいだと思うから、無理やり、強制してやる。




─────あー、ほんと。めっちゃ、すきだったなあ。