何もなかったと言えば大嘘だけど、何かあったと言えるのかは微妙だった。
わたしたちは所謂、需要と供給の一致、だったわけだったから。
清水先輩は可哀想を放っておけない。わたしはそれをわかって優しさをずるく享受した。そういう、需要と供給。
あの日、初めてお酒を飲んだ日、サクラが暗に言ったような“身体の関係”があったわけじゃない。唇を重ねたこともない。ただわたしが悲しいや辛いを清水先輩に預けていた。
だから、本当にどうしたらいいのかわからなかったし、リュウ先輩がなぜわたしを放置していったのかもわからなかった。
沈黙が、続く。
取り留めのないくだらない話なら、わたし発信でいくらでもできる気がしたけど、なんとなく、してはいけない雰囲気があったから、出来なかった。
「かぐら、」
また先輩が口火を切る。わたしの名前を、震えるみたいに呼んで、それから、へたり、とその場に先輩は座り込む。


