君に毒針




何を話そうか、と。必死に頭を悩ませていれば、先に口火を切ったのは清水先輩だった。



「…あーっと、全然!大丈夫ですよ!それより、清水先輩風邪なんですか?」

「……うん、数日前から。あ、もう治りかけ、だから明日からは普通に、大学行く予定」

「そう、なんですね、よかったです」



どうにも、言葉が出てこない。
わたしも、清水先輩も、わりとテンションは高い方だし、会話のキャッチボールはお互い苦手ではないはずなのだけど。
この空間が、わたしたちには悪く作用してしまう。



ジャズコンサートを見に行った日は普通に話せた。先輩後輩として、普通に。

むしろ、その時はリュウ先輩とは話さなかった。話しかけ方がわからなくて。

でも、清水先輩は「おお!神楽、おひさー」とみんなの前で見せるお調子者の先輩でわたしの前に立っていたから、わたしも「お久しぶりです!」ってみんなの前で見せる普通の後輩になれた。