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────その日のちょうど4限が終わった時。
講義室から出たわたしの視界には、見慣れない光景。
ああ、これ、前にもあったな、と思いつつ、前とは違うテンションで、その人に話しかける。
「リュウ先輩、」
誰かを待っているみたいに壁によりかかっていたリュウ先輩は、わたしの声でスマホから視線を上げて、「神楽、待ってた」とふわりと笑った。
いくら片思いを捨てた、とは言っても、先輩の顔は国宝級なのであんまり笑わないでください、と本当に心の底から抗議しようと一瞬思ったけれど、リュウ先輩が好きな時に好きなように笑えなくなるのはよくないな、と思ってやめた。
「先輩、何かありましたか?」
「…うん、どうしても神楽にしか頼めないことで」
「…わたしにしか?」
そんなこと、この世に存在するだろうか。
女の子、が必要ならわざわざ講義が終わるまでわたしを待つことなく、そこら辺の子とっ捕まえれるだろうし、サークルの子が必要なら、それこそ、今日は3限までしかとってないから久しぶりにサークルに行くね、と言っていたサクラでいい。
だから、リュウ先輩がわたしに何を頼みたいのかさっぱりわからなくて、首を傾げたら、「とりあえず、着いてきて」と先輩は歩き出す。
…相変わらず言葉が足らない人だなあ。


