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「ねえ、樋野くん、?樋野くん、ってば!」
───また予想外。これは、わたしがじゃなくて、彼が、彼の反応が、予想外なのだ。
今日のいちばんのりはリュウ先輩。にばんのりはわたし。さんばんのりは樋野くんだった。
だから、樋野くんはわたしとリュウ先輩の談笑中に、ばんっと勢いよく扉をあけて部屋に1歩だけ入ってきた。でも、すぐに「俺は帰ります」と宣言して出ていってしまった。
すごく、不機嫌の色をしていた。
「樋野くんって、」
思わず樋野くんを追いかけているけれど、何度呼びかけても彼は振り向かないし反応も返さない。
どこに行こうとしているかも、わからない。だって、彼が向かうのは大学の出口じゃなくて、むしろ、奥のほう。
今から帰るんだろうっていう学生たちと何人もすれ違った。


