「そんなに驚かれても俺はお化けじゃないけど」
「あっ、えっと…」
ひとり脳内会議をしているうちに扉を開けていたらしいリュウ先輩が、開いた扉の前で不思議そうな顔をしてわたしのことを見ていた。
いたたまれなさが最高到達点をゆうに過ぎていて、自分でも笑いそうになるくらいのか細い声で、「おつかれさまです」となんとか絞り出せば、「ん、おつかれ」とリュウ先輩は何事もないように言う。
「入んないの?」
くるりと体を返していつもの定位置──ピアノの前に移動したリュウ先輩は、いつまでも立ち尽くすわたしにそう問いかける。
「入ります」となんとか答えてねじり歩くようにゆっくりと久しぶりのそこに足を踏み入れれば、「ふはっ…神楽、踏んだら死ぬ爆弾でもそこに埋まってるの?」と堪えきれないとでも言いたげにリュウ先輩が笑うから、すこし怒りたい気持ちが芽生えたりする。
「爆弾は、ないです、けど」
「うん」
「…ちょっと、いま、どのようにすればいいのかってのが、わからず、」


