君に毒針




「言ってよ、なんで俺がずるいの」



わがままを言う幼さを急に出てくるのはやめてほしいと思った。
いつもは大人びているくせに、ここぞというときに歳下の特権を使う。


はああ、と空気を吐き出す。なんだかもう、やけくそだった。




「ずるいよ、樋野くんはずるい。だって、わかんないじゃん!何考えてるのか、わかんなくて、ずるいよ!」

「わかんない?なにがわかんないんですか、」

「すき、とか、片思い捨てて、とか、言ってたくせに、いざそうなっても、なんにもない。
今日だって、顔合わすのも話すのも1ヶ月ぶりだった。すきだったら、わたしそんなの耐えられない!
わたし、去年、たくさんリュウ先輩に会ったもん。去年だけじゃなくて、高校の時も夏休みはずっと会いに行ったもん。すきだったから会いたくて」

「そ、れは、言ったじゃないですか。つけこみたくないって。…てか、過去の話やめてくれませんか?リュウ先輩の話しないでください、腹立ちます」

「つけこみたくない、なんて言ってなかった!猛烈につけこみたい、って言ってた!」

「っ、んなこと、覚えてなくていいです、」



はあ、はあ、と。勢いよく話したせいで、お互いすこし息が上がってしまう。

ぐるぐる回るうるさい感情のまま、「そんだけ!」と捨て台詞のように吐き出して、手を振りほどこうとすれば、「待って」と樋野くんはそれを許さずわたしを解放はしない。