君に毒針




ぽつり、と。思ったよりか細く声が出てしまった。

自分でもびっくりして、何を言ってんだろう、なんて今度はわたしが弁解をしかけたら、樋野くんは「どういうことですか?」とそんな余地は与えてくれない。



「あ、いや」



かっこ悪い、途切れの悪い返事が口から出る。

なかったことにしたくって、「あー、家着いた!」とわかりやすく話題を変えるけれど、さっきまでの遠慮した樋野くんはもうそこにはいないようだった。


帰ろうとするわたしの腕を、樋野くんは捕まえる。久しぶりに感じるじくじくとした熱さに、一瞬くらりとする。



「…俺、ずるい?」

「……いや、」

「むしろ、すごく誠実、を心掛けているんですけど」

「う、ん。そう、だけど、」

「けど?」



逃がしてくれない。急に、逆戻り。また痛いくらいに感じる熱っぽい視線に。