君に毒針




『俺は、今、本音を言うと、猛烈につけこみたいです』

そう言ったくせに、本当に樋野くんは一度もつけこむ気がないようだった。たぶん、わざとわたしに好意を見せないようにしている。

連絡もよこさなくなった。夏休みだから会いもしない。

今日だって、樋野くんが来るのかどうか、わたしは樋野くんから聞かずに、ジャズ研グループの出席確認の返事で知ったんだ。




変な人だな、と思っている。

好意がなくなったのかも、と思ったけれど、今日遠慮がちに見え隠れするわたしへのそれは、たしかにまだ存在しているようで、でも、本当に彼はそれを隠そうと頑張っていて、おかしかった。

隠しきれずにたまに出てきているだけだった。それが本当に変だと思った。



「樋野くんはさあ、」



隣を歩く彼を見ないで、足元を見ながら零す。



「…なんか、ずるい、よね」