君に毒針




今日の樋野くんとわたしは、前よりもずっとただの後輩と先輩だった。
あの日ずっと隣にいてくれたけど、それ以降特に目立った進展はない、というか、むしろ後退したような。

夏休みがはじまって1ヶ月。
何度も遊んでいるサクラに会う度に「最近樋野とはどう?」と聞かれていたけれど、本当になんにもないから答えようもなかった。



「先輩、」



駅とマンションのちょうど間くらい。あと半分で家に着くって時に、樋野くんは立ち止まった。

だから、わたしも立ち止まって、樋野くんの次の言葉を待てば、樋野くんはわたしから視線をすこしはずしてから、ふう、と息を吐く。



「…もう、泣いてませんか?」



どこを見てるか分からない視線のまま、樋野くんは言う。