君に毒針



満月が、淡い光を放っていた。

なんとなく外の空気が吸いたくて、清水先輩の部屋を出てからずうっとこの場所にいる。

自分の部屋に戻る気にはなれなかった。



「ミナ先輩、」



夜のしんとした空気が、揺れた。

夜空を見ていた視線をゆるく声の方に動かせば、思ったよりもずっと近くに、いた。樋野くんが、わたしの隣にいつの間にか立っていた。



「………樋野くん」



会うのは久しぶりだなあ。顔を見てそんなことを思ってから、いや、でも、テストの時に一度見かけたんだった、と考えていた。

今日のわたしはあんまり人と話す気力が湧かない。だから、考えを口に出すのが億劫で、ひとこと、「こんばんは、」とだけ言う。



「いくら夜でも暑いんで、飲んでください。これ」



樋野くんが右手にぶら下げていたビニール袋からペットボトルをわたしへと差し出した。

水滴がついているそれは買ったばかりのように見えて、「ありがとう、」と受け取りながら疑問を浮かべていると、察したように樋野くんは口を開く。