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呆気なかったなあ、と。マンションの前の公園で、錆び付いたブランコに腰かけながら思った。
呆気がなかった。全てが、とても、一瞬だった。
あんなに捨てたくなくて駄々を捏ねていたのに、捨てる時は存外手応えがなかった。
───まだ、なくしたことを、実感していないだけなのかもしれないけど。
清水先輩は、わたしの言葉に「そっか、」と返した。
それから、「神楽は、いつの間にか強くなってたんだな」と一瞬泣きそうな顔をして、「…最初から、強かったか。初対面で告るやつだったもんな」と無理やり作った笑顔をわたしに向けていた。
本当は、もっと、言うべきことがあった。聞くべきことがあった。
だけど、それらは全て、適切なタイミングで話すべきことで、どれもが遅すぎると思った。だから、言い出せなかった。


