君に毒針




手首に巻いている細い鎖を握る。

きっと明日はつけない。その鎖を、彼から貰った最初で最後のプレゼントを、握る。


俺がそばに居るから。その言葉にたくさん甘えてしまった。縋ってしまった。

このブレスレットは、わたしが変わらないでいる限りずっとそこにあるんだと、そう感じさせてくれる精神的支柱みたいなものだった。

だから、貰ったあの日からずっとつけていた。つけ続けていた。



「清水先輩、」



もう一度、息を吐く。
ひとりで歩けるのにひとりで歩けないふりをしていた。ひとりで泣けないふりをした。寂しいを埋めていた。わたしはずるいから、利用した。


視界の中に真っ直ぐ清水先輩をうつす。
もうわたしは、この甘い毒を受け入れてはいけない。絶たないといけない。



「────わたしもう、可哀想じゃないです。可哀想は、卒業したんです。……だからもう、ここには来ません。先輩の腕の中で優しくしてもらう必要は、もう、ないです」