君に毒針




*



「ミナ?」

「っ、あ、」



ぼんやり、してしまっていた。終わりを意識してしまったら、急にはじまりを思い出してしまった。




あの日から、いくつも変わったことがある。

ふたりきりのときは、変わった。
清水先輩がわたしをミナと呼ぶようになった。
わたしは清水先輩をコウキと呼ぶようになった。


まるで友達のような、仲のいい先輩後輩のような、そんなどうでもいいメッセージのやりとりがなくなった。
代わりに、甘い毒の誘いだけが、わたしに届くようになった。甘い毒を求めることだけ、送るようになった。



すう、っと深呼吸する。心臓がうるさく動いていた。
緊張、しているらしい。



「清水先輩、」



決別の意味を込めて、呼び方を変えた。
それにきっと彼も気付いていて、でも、何も言わない。
最後まで、彼はわたしの求めているもの以外を与えようとしない。



「わたし、リュウ先輩に振られました。ちゃんと、振られました」

「…うん、」

「……あのメッセージ、返事出来なくてごめんなさい。知ってたんですよね?だから、送ってくれた」

「…うん。リュウから、連絡来たから。大丈夫かなって思ってた」