君に毒針




「………清水先輩には、っ、わかんない」

「…わかんなくねえよ」

「わかん、っ、ない……っ!?」



────香りがぐぐっと強くなった。

今度こそ、視界は全て塞がれていた。わたしのうなじあたりには優しい手のひらが、ある。



「わかるよ、わかってる。神楽のことは、俺がわかってる」



ぐちゃぐちゃだった。どうしていいかわからなかった。

リュウ先輩は、わたしのことを拒否しないまま、知らない人のことを受け入れる。

そんなことは今に始まったことじゃない。でも、初めて見るすきな人の他人とのキスシーンは、わたしの人生の中ではだいぶ鮮烈だった。