旧講義棟についた頃には、上がった息のせいで、わたしは泣くどころではなかった。
ただひたすら、足らない酸素を身体中に巡らせることだけを考えていた。
サークル棟とここは離れている。どれだけ走ったんだろう。
きっと、すれ違った何人かはおかしな人だとわたしを見たに違いない。
腰を、おろす。息を整えるため、気持ちを落ち着かせるため。
ぎゅうっと瞼を強く閉じて、大丈夫、大丈夫、と唱える。
そんな時、だった。
「っ、」
鼻腔をくすぐる香り。可哀想なわたしの頭を撫でる時に、あの人からする香りだと、すぐに気がついた。
「…なーに泣いてんの?」
「……清水先輩、なんの用ですか。…あと、泣いてません、まだ」
「いや、サークル行こうとしたら、神楽とすれ違ったから。場所反対だよー、と教えてあげようと思って声掛けたけど、全然聞かずに走ってってさあ。困って追いかけたら、発見、って感じ?」


