君に毒針




────サクラには、あの日の出来事を全て話してあった。

だから、わたしがいつもより勉強していた理由がただ気を紛らわすためなことも知っているし、テストが終わったのにサークルに足が向かないわたしを、無理に誘ったりもしない。

「わたしも今日は帰るよ」と言って、テスト期間中も何度も一緒に帰ってくれた。今日だって、もしかしたら本当はサークルに顔を出したいのかもしれないのに、「今日はさ、ぱーっと電車でどっか行かない?」とわたしのために魅惑的な誘いをしてくれる。



「疲れた頭には糖分が必要だし、…失恋にも糖分、必要じゃない?」



わたしの感情を伺うようにサクラが言葉を選んでいて、その気遣いがじんわり心を溶かす。

「…そうだね、忙しくしすぎてあんまり甘いもの食べてなかったかも!」と、気遣いを有難く受け取れば、にんまりと笑ったサクラは、スマホに写った話題のクレープ屋さんを指さして、「ここ、行こ!」とわたしの腕を引く。



わたしは着実に、すこしずつ、立ち直っている。一歩ずつ、ちゃんと、過去に出来ている。