君に毒針




案外大したことはなかった。

泣いて泣いて、食事が喉を通らない、なんてことにはならなかったし、目が赤く腫れてしまったのもあの日の翌日だけだった。

何も無かったなんてことはないけれど、想像よりはわたしは平気でいられた。


───そう、思い込んでいるだけかもしれないけど。



リュウ先輩への片思いを捨てたあの日から数日後、わたしにとってはタイミング良くテスト期間が始まった。

一応、単位はとても大切だし、学び舎としてここに来ている以上、恋だの愛だのにうつつを抜かしすぎるのは良くない。

傷付いた心から逃げるように、わたしはテスト勉強に励んでいて、ようやく、今日、前期の最後のテストが終了した。



「今回も再試に課金、絶対にありませんよーうに!」



ぱんぱん、と手を叩いて、サクラは空に向かってお祈りをしているらしい。

なんとなく釣られてわたしも、「ありませんようにー!」と空を見上げれば、「…ミナは今回ないでしょ」とサクラはじとり目をする。



「いや、わかんないよ?勉強はそりゃ…したけど…」

「いーや、わかるよ。あんな全集中してたんだから、課金はないね」