君に毒針



カバンから折りたたみ傘を出して、広げたら、本当に終わってしまうんだと思って、柄を持つ手が震えた。


4年間。わたしにとっては長いようで一瞬だった。
先輩にとっての4年間は、どんな4年間でしたか?


先輩にほおりなげた見返りのないすきを重ねたら、どれくらいの大きさになるんだろう。

今日もすき、明日もすき、明後日もすき。呪文みたいに唱えるそれに、先輩はいつもうるさいよって言っていたけど、決して冷たくはなかった。

はたから見たら冷たく断られてるように見えても、わたしにとっては、わたしたちにとっては、違ったんだよなあ。



先輩はわたしにうるさいともうざいとも、言う。すきです、うるさい。すきです、うざいって、言う。でも絶対にやめてくれ、とは言わない。嫌いとも、言わない。すきじゃない、とも言わない。

両思いですか?って聞くと違うって言う。すきですか?って聞くとそうじゃないって言う。
でも、すきじゃないんですか?って言うと、そうは言ってないよ、すきじゃなくないよって言う。そんな人だった。



震える手で傘を広げ終わって、本当に終わりだって思って、せっかく泣き止んだのに、また涙の波が来そうになって。

先輩の顔を見ずに、また明日ってそう言って、先輩の傘の下から飛び出して─────



「っ…!?」