君に毒針



先輩の方を見れなくて、足元ばかりを見て歩いていた。
せっかくの最後の相合傘なんだから、こんな距離で先輩のこと見れるのなんてないんだから、穴が空くほど見なきゃ損じゃない?とかいう打算的なわたしもいたけど、そう簡単にできることでもなくて。

雨音がBGMみたいだった。

世界の主人公が、わたしと先輩みたいだった。




「神楽、俺あっち」

「あっ、はい」

「傘今日も持ってるでしょ」

「……持ってます」

「広げなよ」



もしかしたら家まで送ってくれるんじゃないかなんて淡い期待は、別れ道で無惨にも砕かれた。

本当に、無意味な優しさをくれる気は、もうないみたいだった。
終わりのための、捨てるための優しさだけ、わたしにくれるようだった。