背後からの先輩は、まさかのわたしのことだったらしい。呼びかけと同時にトントン、と叩かれた肩でやっとそれに気付いたわたしは、ビクッと肩を震わせて振り向く。
そして、わたしを呼んでいた主──樋野くんに「なにー?」と首を傾げれば、樋野くんは無言でカラオケに向かう人たちを指さした。
「行かないんですか?」
「…え?」
「二次会」
「あ、あー!うーん、そうだね、行かない、かなあ?」
ちらりと二次会に向かう人たちを見つめて、乾いた唇を無理やり動かすけれど、その強がりで余計に血の気が引く気がした。
樋野くんが指差す集団の中にはだいすきな人の背中と、その周りを囲む女の子たちの背中。
あーあ、行かないでほしいな、とか。先輩早く家帰ればいいのに、とか。そんなこと図々しく思っちゃう自分って、すごく嫌だし滑稽だ。
飲み会の途中からリュウ先輩のこと見るのがしんどくなったわたしは、本当に樋野くんのことしか見てなくて、忘れかけてたのに。
樋野くん、わざわざ思い出させないでよ。


