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「こっちのが甘くて、こっちは苦い」
「……じゃあ、甘いほうのがいいってことですよね?」
「さあ?どーだろーね?」
リュウ先輩は、こんなときでも暴力的にかっこいいから困る。
前にご飯を食べに行った時のような、たくさんの人が、知らない人たちが、ガヤガヤと空間を共有している、そんな場所に連れていかれると思っていたのに。
蓋を開いてみれば、なんだか凄く高そうなシックな感じのたたずまいで、扉の前で思わずあんぐりと口を開けたわたしに、先輩は、「神楽、行くよ?」って、優しく言った。
通された個室は、ふたりきりにはちょうど良い大きさなのかもしれないけど、わたしにとっては、ちょっと小さすぎるような気がして。
昼間、だったが大きくなってきてるかもとかなんとか、偉そうに言っておいて、今まで以上に、今世紀最大に近く感じる、リュウ先輩との距離に、高ぶる思いをおさえられずにいる。


