「ひどい!バカって言うなんて!」
「バカじゃん。ね、きみもそう思うでしょ?」
「………え?」「………え?」
素っ頓狂な声が、重なった。
サクラがすんごいナチュラルに話しかけたわたしの隣に座ってたらしい男の子は、突然の会話の豪速球に困ったように眉を下げていた。
見たことないから……1年生?
「この子バカでしょ?先輩に見えないでしょ?」
「………あ、はい…?」
「なっ、サクラ!紹介の仕方おかしくない!?」
「おかしくない。ほら、可愛い可愛い右隣の後輩とお話しなって。左ばっかり見てないでさ。リュウ先輩見てたって状況変わんないよ?」
「そうだけど………」
チラリと右に座る彼を見れば、やっぱり困ったような顔をしている。
そりゃそうだよね。新歓で隣にいた先輩がわたしって困るよね。わたしでも困る。
口を開けばリュウ先輩、視線の先にもリュウ先輩、なんて。そんな先輩隣に座りたくないナンバーワンだ。
「あー、えんとー。お名前は?」
さすがに、彼に申し訳ない気がする。うん、申し訳ないね、さすがにね、本当にね、良くない。
だいすきな先輩に後ろ髪引かれつつも、心を入れ替えたわたしは、しっかりと隣の後輩くんに向き直り、手始めの会話のジャブ─お名前聞くターン─をうつ。
「樋野、です」
「樋野くんかー、なるほどー」
「………死ぬほど興味無さそうですね」
「えっ、バレた?」
「バレたって、」
ははって思わず笑えば、同じタイミングで彼は笑った。
よしよし、掴みはOK、なんてにんまりしていると、「先輩の名前は?」と後輩くん──改め樋野くんがわたしに問う。
「わたしは神楽ですので、ぜひ神楽先輩、と呼んでくれると嬉しいな!」


