樋野くんはわたしたちの世界をぶち壊す。
わたしと、リュウ先輩と、清水先輩。3人の世界を簡単に壊していく。
秘密はずっと秘密のままでいた方がいいんだ。それなのに、彼は、許してくれない。
「先輩、ちゃんと、聞いてください。逃げないで、ください」
降参、観念するから。どうか続きを言わないで。
わたしが忘れていた記憶を、呼び起こさないで。
どうか、お願いだから、頼むから、
「─────先輩の持ってる片思い、全部捨ててください」
針が、刺さる。閉まっていた大事な場所に、刺さって、傷が広がる。
ずっと知らないふりをしていた。知ってしまったら、終わってしまう。
2年前の春の日に生まれた感情を、わたしは捨てたのに。捨てても捨てても、燻っている感情。
だから、捨てずにしまうことにした、いらない感情。


