君に毒針



「────許して、先輩」

樋野くんがそう言ったのと、グラりと視界が揺れたのはちょうど一緒くらいで、それから、焦点が合わないくらい樋野くんとの距離が近づいた。

樋野くんに掴まれている右手は、すごく熱くて、痛い。



「先輩、先に謝るよ、ごめんなさい」



どうしてこんなに至近距離。フワフワする頭の中には、けたたましい警報が鳴り響いているのに、硬直したみたいにわたしの脚は動いてくれない。

せめて、と首を横に振って抵抗するけれど、樋野くんにはそんなわたしは関係なかったかもしれない。


動くのは瞼だけ。息をするのも忘れそうで、掴まれた場所から伝わる熱がものすごい速度で全身に回る気がした。