君に毒針



突然左耳に当てられた携帯は、もちろんわたしのものじゃない。

びっくりして目をぱちぱちさせていたら、低い声が、鼓膜を揺すった。



『………樋野ですけど、』



一瞬意味がわからなくて、理解が追いつかなくて、アルコールのせいなのか、それとも違うのか、わからなかった。

身体中の温度が上がる気がして、どうにも変な気分。



「あ、の、」

『ミナ先輩?』

「そう、です」



電話だと思ったより樋野くんの声は低いんだ。

左耳が異様に熱くて、それは携帯が熱を持っているせいなのか、わたしの耳が熱を持っているのか、どっちが理由でもどうでもいい気がした。