君に毒針



言おうと思ってたのに。

言ってしまったら、全部変わる気がして言えなかった。


リュウ先輩を諦めたら、清水先輩の元に来る理由がなくなってしまう。

理由がないと、ここには来てはいけない。
どうやって清水先輩と視線を合わせていたのか、どうやって清水先輩と会話をしていたのか、どうやって清水先輩と笑いあっていたのか。
理由がなくなった瞬間に、わたしたちはすべて忘れてしまう。積み上げたハリボテの空間を、一緒になくしてしまう。
わたしたちは、リュウ先輩がいないと、ふたりで居られない。



「明日学校行くんだろ?はやく寝よ」

「……うん、」



清水先輩はいつも通り優しく手を握って、優しくわたしをベッドまで連れていく。

それがあと何回なんだろうって考えたら、目の奥がツーンってしてきて、自分勝手な感情を全部捨てたくなった。
寂しいなんて感情は、持ち合わせてはいけないのに。




「おやすみ」

「…っ…おやすみなさい」



目に涙が溜まっていること、気づかれていませんように。

ぎゅっと清水先輩にしがみつけば、やっぱ甘えんぼじゃんって彼は笑う。

そんな声、聞こえていないフリして、わたしはただ瞼を強く閉じていた。