(神楽side)
「おめでと、」
「……え?」
甘い毒を断つ強さなんか持ち合わせていないわたしは、今日も都合のいい腕の中に飛び込んでしまっている。
ふたりで眠るには少し小さいベッドは、いつの間にか当たり前になっていて、すこし動くと触れてしまうことにも、もう慣れてしまっていた。
ちょうど日付を超えた時、わたしと一緒にベッドに寝そべっていた彼はそう優しい言葉を吐き出しながら、わたしの頭をゆっくり撫でる。
「今日何日?」
「えーんと、あ、」
「忘れんなよ」
「忘れてたわけじゃない、です」
おめでとう、ハタチってやっぱり優しく言う彼は、優しすぎてずるい。
そっか、もう今日は10日だ。わたしの誕生日なんだ。


