君に毒針



いつからか、リュウ先輩をすきでいなければいけない気がしていた。

リュウ先輩をすきでいることをやめてしまえば、わたしはふたつも失くしてしまう。
リュウ先輩もあの甘い毒も、ふたつともなくなってしまう。

だから、このままでいいや、と。リュウ先輩をすきでいるうちはこのままで、と。そんなずるい考えが心を埋めつくしていた。





恋なのかと聞かれたら、そうじゃない、と答えると思う。それは彼もおなじ──ううん、彼の方がわたしよりもずっとそうなんだと思う。彼はただ放っておけないだけ。可哀想な人を放っておけない優しい人なだけ。

わたしたちは不健全だから。
弱いところを掛け合わせて、隔離された空間で、虚しさを埋めている。




この思いに名前をつけてはいけない。
名前をつけてしまえば、もう終わってしまう。

どうしてそんなことを思うのか、自分でも忘れてしまった。だけど、ずっと、そうやって見なかったことにしている。


わたしは一体何を怖がっているんだろう。

片思いが終わること、どうしてこんなに怖いんだろう。



────わたしはいつから、大切なものを見間違えるようになったんだろう。