【そんなこと知ってるよ】
授業中だってのに集中できないわたしは、樋野くんのトーク画面を開いて、文字を打っては消してを繰り返している。
そんなことは自分がいちばんわかっている。終わらせた方がいいことなんて、随分前から気付いている。
でも、終わる理由が見つけられない。終わらせたい理由より終わりたくない理由がありすぎる。
幸せになりたいだけなら、とっくにリュウ先輩なんかやめてる。
それだけなら、もっとはやくに見切りをつけられた。
でも、わたしは、今も尚、こうして駄々を捏ねて自分の感情から逃げている。
逃げていることはわかっているけれど、逃げていると認めてしまうことは、出来なかった。
認めたら、失ってしまう。
何年も必死に大切に誰にも見せずに、自分でもわからないまま、しまっていたものまで、しまってあるはずのものまで、わたしから取り上げないで。


