学校にいても、家にいても、私はずっと息苦しかった。
「リナ。こんな夜にどこ行くの?」
玄関先で靴を穿こうとしていた私を、焦った顔で母が追う。
私はため息を吐いた。
「コンビニ行くだけだし。てか、まだ7時だし」
「本当は、あの子と会うんじゃないの?」
またこれだ。
母は、私の行動ひとつが晴人と結びつくんじゃないかと勘繰るばかり。
「いい加減にしてよ!」
初めて私は大声を出した。
肩で息をする私を、母は驚きの目で見る。
「コンビニ行くだけって言ってんじゃん! 晴人とは会わないよ! っていうか、そもそもあれは、私が悪いって何度も言ってんじゃん!」
「リナ! お母さんは」
「お母さんは勝手だよ! 離婚した時だってそう! いつだって何でも自分で決めて、私の言葉は聞いてくれない!」
一度爆発してしまうと、決壊したみたいに想いが堰き止める間もなく溢れてくる。
ずっと内に秘め、溜めていた怒り。
「ほんとはこんな田舎町なんて嫌だった! お父さんと離れるのだって嫌だった! それでも今まで頑張ってきたの! 何でかわかる!? 晴人がいたからだよ! 晴人だけが救いだった! 晴人さえいてくれればよかった! それだけで私は笑ってられた!」
「リナ……」
「晴人は悪くない! 晴人は」
晴人はもういない。
その現実に、心が追い付かない。
ついこの前までの残像が、まだ鮮明に蘇るのに。
「私はお母さんの人形じゃない。私には私の意志がある。だからもうお母さんには付き合いきれない」