このマフラーは、ただ晴人からもらったというだけで、別に、今更、意味があってつけているわけじゃないし。

たまたま、他になかったからで、仕方なかっただけだし。



「リナにしては珍しい色のマフラーしてるね」


放課後、あさひは私のマフラーを指差しながら言った。

どきりとしたが、あさひは特に気にしていないようだった。



「あーあ、それにしても、いつになったらあったかくなるのかなぁ。こんなに寒いと、どこにも行く気になれないよ」


寒がりなあさひは、身を縮めながら私にくっついてくる。

おかげで歩き辛くて仕方がないのだけれど。



「ちょっと、邪魔だよ。くっつかないで。そういうのは、カレシにしてあげなっていつも言ってるでしょ」


私の言葉に、あさひは苦い顔。



「いや、だってまだ何か、照れ臭くてさ」

「付き合い始めてどれくらいだっけ?」

「16日」


何だかんだできっちり数えているところに、愛を感じる。

あさひの照れた顔を、すごく可愛いと思った。


笑いながら歩く私に、しかしあさひは足を止める。



「ねぇ、リナ」

「ん?」


振り返ると、あさひは伏せていた顔を上げ、問うてきた。



「私たち、本当にこれでいいのかな?」


あさひの言わんとしていることも、不安に感じていることもわかる。

だからこそ、私はあさひに笑顔を向けた。



「何度も言ってるじゃん。好きなんでしょ? だったら胸張りなよ。私が一番、応援してんだからさ」


しばしの後、うなづいたあさひは、再び私の腕を取った。